リサーチのプロにアンケート設計を見てもらった話

Webとかの話
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※これは、「WEBやデータ分析に関する投稿をみんなでしてみよう Advent Calendar 2021」19日目の記事です。

先日、「事業会社のデジマの課題を108人にきいた話」という記事を書いた際に、セルフ型アンケートサービスを使い、事業会社のウェブ担当者に向けたアンケートを実施しました。

手軽にアンケートが実施できるなあと思ったと同時に、良くも悪くも結果がきちんと出てしまうなあと思いました。

GTMの設定をミスしたらデータは取得できませんが、アンケートは配信したら回答が集められます。そして集まった回答は、数字としてまとめられ意思決定に影響を及ぼします。それって怖くないですか?

今回の記事では、長年マーケティングリサーチに取り組んでいる山本寛さんにアンケート設計を見ていただき、設計をするにあたってどんなことを考えたらよいかをお聞きしました。


山本寛さん

テーマパークと人材サービスの領域で10年以上、マーケティングリサーチ業務に従事。オリエンタルランドにて長期集客計画や施設開発計画の立案を行なっていた。現在は、大手人材サービス会社にて、サービスブランディングやキャリアに関する研究を実施。定量調査、定性調査から顧客インサイトを洞察できるようになるための心構えやノウハウをストリートアカデミーの講座などを通じて広めている。

参考までに修正前のアンケート項目はこちら。この記事とあわせてご覧ください。

インサイトを見つける

ーー 今回のアンケートは、以下の流れで作成したのですが、どうでしょうか?

1.やりたいことの設定

2.インサイトの書き出し

3.アンケートの狙いの設定

4.アンケート対象の設定とアンケート設問の作成

山本さん:考えを書き出すことから始めるのは非常に素晴らしいと思います。『「欲しい」の本質 人を動かす隠れた心理「インサイト」』という本では、インサイトは「人を動かす隠れた心理」と定義されています。言葉にできるニーズと違って隠れているわけですから、見出す必要がある。そのために、一度考えを書き出してみて、そこからインサイトを探っていくのが良いでしょう。

▲実際に書き出したものの一部

山本さん:書き出したものは「事象」や「感想」になっていますよね。これらをがんばって「一言でいうと〜」というところまで抽象度をあげてみてください。そしてもう一度、抽象から具体に降りていく。そうすることで、インサイトと紐づく事象の構造を整理することができます。

ーーなるほど。一言でいうと「望ましい仕事ができている状態で、成果がを出したい」と言えそうです。

山本さん:事実を書き出し把握して、背景にある心の動きや価値観を洞察できている状態を目指しましょう。そして、それに対して「共感できる」という感覚があると、「相手を理解できている状態」に近づいていきます。

山本さん:もう一度先ほど書き出した内容を見ていきましょう。
例えば、「業務が広がってツールの使い方などを覚えるのが大変」という事象からは、おっしゃるように「成果を出したい」という価値観が見えるのと同時に「手広くやらないといけない一方で、1つ1つの専門性も高めないといけない」という焦りのような気持ちが見えてきます。こうした面に着目してアンケートの設問を作っていくと、個人の感情が見える面白いものになるでしょう。

個人の感情をすくいあげるアンケート

ーー個人の感情が見えるアンケートって面白そうですね

山本さん:「アンケートをとった人は私のことをよくわかっている」と回答者に思ってもらえたら、それは価値があることだと思います。相手のことを自分が理解できているかどうかは、相手が決めるものですから。

その意味で、「こういう課題があって、こういうことが大変ですよね?」と訊ねた時に、回答者が「私の苦しみをわかってくれるのか!」と思ってくれたら成功です。そんな設問が作れれば、インサイトをついた面白い結果を得ることができ、結果を読んだ人も自分ごととして捉えやすく、洞察に繋がりやすいと思います。

なお、政府統計は膨大なデータを扱っていますが、調査の性質上、その中から個人の感情を読み取ることは難しいものが多く、読み解くのに根気を要します。なかなか興味を持って自分ごととして捉えるのが難しいのですよね。大事なデータがたくさんあるのですが(笑)。

ーー今回、特に難しいなと思ったのが、課題を聞く項目でした。「各項目に関してどの程度、課題を感じましたか?」という聞き方をしたのですが、ここまでを振り返るともっと別のアプローチがあったかもと思います。

山本さん:課題として挙げられている項目は「組織としてのあるべき姿」と「個人の働き方や理想の姿」の2つに分けられますが、まずは個人にフォーカスした設問がいいと思います。回答者は自分の知っていることにしかリアルに答えられませんし、その生々しさが結果を読むときの洞察に繋がります。組織としてのあるべき姿は本音ではなく建前論になりやすい一方で、個人にフォーカスすればより生々しい、本音に近い内容を訊くことができますね。

※「各項目に関してどの程度、課題を感じましたか?」の回答

ーーもしもう1度アンケートを行う機会があったら、全く別の切り口で、個人の感情が見えるアンケートにしたいと思います。今回は、ありがとうございました。

まとめ

アンケートが手軽にできるようになり、調査だけでなく、施策に活用するケースがこれから増えていくと思います。今回は、山本さんにアンケートを見ていただいた上で、アドバイスをいただきましたが、個人的には「意味のあるアンケートをとるために必要なこと」をお聞きできたと思います。これからキャンペーン戦略を立てるために調査したい、アンケートを使った施策を考えたいといった方のお役に立てたら幸いです。

また、今回登場していただいた山本寛さんの講義が聞きたい、お仕事のご相談をしたいという方は、こちらをご覧ください!

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